ふと、閉じていた目を開いた。
温かい布団の中で弛緩しきった体は重く、指先一つ動かすことさえ億劫だ。
なんという怠惰、まるで温くなった湯の中にでも浸かっているかのようだ。
せめて声だけでも出してやろうかと思ったが、ただただ吐息ばかりが漏れるだけで掠れた音一つこの空間には響かない。
その鼻先までを覆う布団の中で、溶けた吐息が水蒸気になって頬の周りの湿度だけを上げていく。
その呼吸はただ温かく、意識が体から剥離していくような錯覚を覚えて思わず眩暈がした。
眩暈を振り切ろうと二、三度瞬きをして、漸く、部屋の天井が僅かながら明るくなっていることに気づく。
この太陽が届かぬ地上でも微かばかりの光は訪れるのだ。
ああ、太陽の恩恵のなんと尊いことだろうか。
薄青い光に染まる天井を見つめ、深く息を吸い込んだ。
朝の空気はしっとりと水を含んで冷たい。
周りを包んでいた空気の粒子が乱れて、鼻先をそっと撫でるように冷たく濡らした。
静かな、朝だ。
私はただただ黙って天井を見つめる。
薄い青、仄かに混じる紫は自分の瞳より随分と青が勝っているように見えた。
冷たい空気を吸い、温かい水蒸気を吐き出す。
その折に、僅かに上下する薄っぺたい胸の動き。
生きている。
突如、実感を伴った思いと、その思いの持つ微かな振動に胸の内が震える。
まだ、どこかに怯えがあるというのか。
……いや、そもそもそんなものはなかった筈だ。
では、これは喜びか。
怠惰な体に鞭を打って、シーツの上で体を起こす。
温い微睡みは、外気に触れて一気に失せた。
時刻は、起床予定よりまだ幾分か早かった。
時計の隣に置かれている卓上カレンダーへと目を滑らせる。
決戦の日まで、あと僅かの時間しかない。
あと、何日こうして朝を迎えられるのだろうか。
薄青い空気を胸いっぱいに吸い込んで、私はシーツの波間で喜びにひとり膝を抱えた。
カーレルの独白