自分の系譜はイクティノス譲りなのではないかと、時々思うことがある。

「何がどう違うんだい?」
「品種だよ。」

兄貴の買ってきたじゃがいもの袋を見遣って、そう呟く。

「これはメークイン、普通コロッケ作る時には使わないんだ。」
「へえ、そうなんだ。」

兄貴はまじまじとその袋を眺めている。
ああ、兄貴が料理が出来ないなんて事は分かりきっていたのに、何故芋の品名を指定せずに買い物になんて出したんだろう。
しかも……それ、少し緑がかってきてるし。

「……夕飯、カレーにでもする?」
「えー。」

兄貴が酷く不満そうな声をあげた。
まあ、そうくるだろうな、とは思っていたが。

「ハロルド。私はコロッケが食べたいんだよ……。」
「知ってるよ。それで買い物に行かせたんだから。」
「…………。」

兄貴が食べたいと言ったから、コロッケ。
イクティノスと考え方が一緒だ。

『久しぶりに、肉じゃがでも食べたいなあ。』

メルがそう、ポツリと呟いたのを聞いていて、夕飯を肉じゃがにするイクティノス。
幼いオレ達ではどうみても食べきれない量を作って、後でお裾分けだと言いながら持っていくのだから。

それと同じだと思う。

「仕方ねえなあ……買いに行ってくるよ……。」

ソファから立ち上がって、財布を手に取る。
すると、兄貴はにこにこと嬉しそうに笑った。

「え、本当? 嬉しいなあ。」
「自転車、出しっぱなしだろ。使うからな。」
「うん。」

二度手間。
それが分かっていても買出しに出かけてしまうあたり、やっぱりオレはイクティノスに似てしまったらしい。
その精神にも系譜は存在するのだ。



ああ、そうだ。
グロテスクな芽が発芽する前に、あの緑のメークインをイクティノスの所にでも持っていくとしよう。

微妙に嫌そうな顔を浮かべながらそれを受け取るイクティノスを想像して、思わず苦笑が零れた。










自転車の行が楽しかった^▽^
自転車とか、そういう物を貸し借りするベルセリオス兄弟かわいいと思うんだ……!