「お前の為に作ったんだ。」

そう言って手渡されたのは一粒の錠剤。
糖衣錠なのだろうか、つるつるとした表面で、爽やかなグリーンがどうにもうさんくさい。

「飲めというのか……。」

これを。
そう言うとハロルドは真面目な顔で頷いた。

「勿論。」
「一体何の薬だ、これは……。」
「体に必要なものを補給させる薬だよ。」

ハロルドはけろりと言うが、何とも怪しい。
特に色が。

「大丈夫なのか……?」
「大丈夫だって。」
「ビタミン剤は、普通、緑じゃないだろう……。」

緑の錠剤を手のひらの上で弄びながら呟く。
ハロルドは私をビシリと指をさすと、常識に囚われるなと言った。

「緑は目に優しい色だから平気だよ。それに……。」

治験したし。
にこりと笑うハロルド、その表情の奥を私は読めた試しがない。
本当か、嘘か。

「全く……。」

溜め息を一つ零すと、それを手早く飲み込んだ。
悩んでも答えがでないのなら、諦めてしまった方が早い。

それを見たハロルドがにこりと笑う。
何だか騙されたのではないかという気持ちにさせる笑みだった。





「馬鹿だなあ。ビタミン剤だなんて一言も言ってないじゃないか。」

相変わらず人を疑う事が苦手な奴だ。

「お前が仕事ばっかりしてるから悪いんだぞ。」

少なくともここ三日は碌に眠っていないのではなかろうか。
目の下の隈が日に日に酷くなっていた。

少しは休めばいいものを、この男は誰かの為にと己の体力を平気で削るのだから困ってしまう。
心配する方の身にもなれと人にはいつも言う癖に。

「ああ、ホントに馬鹿な奴。」

そう言って、隣で眠りこけているディムロスの髪をそっと梳いた。



あなたが元気になるように。










ハロディム^^^^^

ハロルドに渡された緑の糖衣錠とか……怖くて飲めないだろ……
寝てない→体に必要なものを(強制的に)補給させる薬→睡眠薬ですね、わかります^▽^