「ジューダス。オレ、ジューダスが好きなんだ。」

そんな台詞が聞こえた瞬間、強烈なデジャブを感じた。
何か、聞き覚えがある。
そう言えば確かスタンも同じような事を言っていたような気がする。

「…………ホントに親子だな。」
「え?」
「いや、何でもない。」

思わず口を突いて出た台詞に、カイルが不思議そうな顔をした。
しかし、それはともかく。

「…………。」

僕はどうしたらいいんだろう。

「ねえ、ジューダス聞いてた?」
「……聞こえている。」
「じゃあ、何か言ってよ。」

何かとは何だ。
一体どうすればいい。
助けを求める視線をシャルに送ってみるが、シャルは微妙な薄笑いを浮かべるだけで何も言わなかった。
いや、表情なんてものはさらさら見えないが、ソーディアンとマスターの関係だ。
それ位は何となく分かる。
大体、コイツはスタンの時もそうだった。
微妙な顔をするだけで何も言わずに傍観を決め込んでいた。
ああ、思い返すだけで腹立たしい。
いや、違う。
まてまて。
今はそんな事を考えている場合ではない。

「ねえ、ジューダスってば!」

そうだ、コイツをどうにかしなければいけない。

「む、無茶を言うなっ!」
「無茶って何だよ!」
「無茶だから無茶だと言っているんだろう。」

どう言って諦めさせよう。
コイツはスタンに似て相当しつこいだろうな。

「…………僕にはもう想い人がいる!」
「え、嘘っ! 誰……!?」
「そ、それは……。」

言える訳が無い。
スタンだなんて。

「それは……それは……その……。」
「ねえ、本当に好きな人いるの?」
「いる!」

誤魔化しではないかと勘繰られている。
不味いな。
いや、半分以上は誤魔化しなのだからそれは仕方が無いのだけれど。

「だから、誰なの!?」
「え、っと……。」
「ねえ、ジューダス!」

誰か。
誰かいるだろう適任が。
そう、誰でもいい。
だがマリアンは却下だ。
こんな馬鹿馬鹿しい話に彼女の名前を持ち出す事は断じて出来ない。

「…………ルー、ティ?」
「えっ!? 母さん!!?」

しまった。
しくじった。
何故よりによってあのヒス女の名前を出したんだ、僕は。
そうだ、スタンから派生して考えた結果、真っ先にアイツの名前が出てきたからだ。

「そんな……ジューダスが母さんの事、好きだったなんて……。」
「え、いや……。」

今更どうやって否定すればいいんだろう。
コイツは完璧に信じ込んでしまっているようだ。
シャルが笑いを噛み殺しているのが気配で分かって、心底腹が立った。

「リオンの頃から、母さんの事……好き、だったんだ。」
「い、いや、待てカイル……。」
「もしかして、父さんの為に身を引いたの?」

その父親とデキていたなんて、一体どうして言えるだろうか。
シャルは抱腹絶倒と言った様子で悶絶していた。
この場に置いていってやろうか。

「カイル違うんだ!」
「何が違うのさ。母さんの事好きなんでしょ?」
「…………い、いや、その。」

どうしたらいい。
どうしたら。

「でも、さ。」

カイルが、ふとそう切り出した。

「母さんは、父さんのなんだ。」
「そうだな。」
「母さんは、渡せない。……だから諦めてよ。」
「ああ、勿論だ!」

これを切欠にどうにか誤魔化せるんじゃないだろうか。
光明が差したように思えた。

「で、オレと付き合って欲しいんだけど。」

そう来たか。

「今すぐに好きになってとは言わないからさ。」
「え、カイル……。」

しつこい。
コイツ本当にしつこい。
やっぱりスタンの息子だ。

「よろしくね、ジューダス。」

そう言うカイルはとてもいい笑顔で、僕はただ黙り込むしか出来なかった。










このサイトで初の試みのカイジュです
え、ぶっちゃけこんなの需要あるの?(※世間ではあります)
しかし、ジューダスさんただのアホですね^▽^