月が、中天に浮かんでいる。

まるで、空を一部分だけ切り取ったような三日月。
日が経つごとに、じわじわと大きくなっていく月。

不安な気持ちになりながら、それをただ見つめている自分。
じわり、じわり。
獅子が、月に、喰われる。

「うわぁああっ!」

慌てて、飛び起きた。
何だろう……凄く、嫌な夢……。

背中に冷たい汗が伝っているのが分かった。
寝巻きがじっとりとへばりついていて気持ちが悪い。

「何だったんだろう、凄いヘンな夢見ちゃったよ……ディムロ……。」

ベッドの傍らに手を伸ばしかけて、途中で手を止める。
そうだ、ディムロスはもう疾うにいない。
代わりに今オレの隣にいるのは、すやすやと眠るカイルだった。
オレと同じ金色の髪をそっと梳いて呟く。

「そっか……、そうだ、全部、終わったんじゃないか……。」

全ては過去の出来事。
全部、終わった事だ。

「着替えてこよう……。」

カイルを起こさないようにそっとベッドを立って、服を着替えた。
汗でべたついた服を脱ぎ捨てて、新しい服を羽織る。
さらりとした布の肌触りに、小さく安堵の溜め息を吐いて、ベッドまで戻った。

沢山の大切なものを失ったと思う。
価値観や意識の持ち方も随分と変わったと思う。

カイルは起きる気配もなく、規則的な呼吸を繰り返していた。
その、ゆっくりと上下する胸を、そっと一定のリズムで叩いてやる。
すると、カイルはほんの少しだけ、にこりと笑った。

「いい子だな。」

微笑んで、オレもその隣に元通り収まった。

未だに鮮明に思い出せる。
リオンに、ディムロスを突き立てた瞬間。

死んで尚、刃を交えた戦友。
二度もその体に友人を突き立てた自分。

誰にとっても、そうするしかなかった。
あの結末しかなかった。
変えようがなかった。

それ位は分かっている。
全ては終わった事なのだ。

ただ、それが心の底で、澱のように燻っている。
ふと、何かの拍子に掻き乱されて、それが舞い上がる。
見えなくなる、動けなくなる。
それが、怖い。

失くしたもの。
手に入れたもの。

大切なものと引き換えに手に入れた世界と、小さなぬくもり。

「カイル……。」

肌越しにそっと触れる暖かなぬくもりにオレはそっと目を閉じた。
赤子の体温に少しづつまどろんでいく。

願わくばどうか、この子にはこんな苦しみがないように。










すみません、相変わらずタイトルは適当^▽^
だって英語わからないもの^^^^^