「いいの?」
ハロルドの唐突な問い掛けに、何の事かと振り返る。
「お前の恋人、随分とモテモテみたいじゃん。放っておいてもいいの?」
たっぷりと皮肉の込められたその発言に笑いながら言を返す。
「そうね、色々な人から好かれているわね。貴方も含めて。」
不機嫌そうな表情でこちらを睨むハロルド。
その視線を軽く受け流して、言葉の続きを待つ。
「へえ、随分と余裕だな。」
「あら、そんな風に見えるかしら。」
「お前って、よっぽどディムロスに好かれている自信があるらしいな。」
彼の子供っぽい嫉妬に苦笑が零れた。
「そんなんじゃないわ、私はディムロスが幸せならそれでいいだけだもの。」
「何だよ、それ。」
その細く華奢な腕を引いて、ムキになっているハロルドの唇を奪う。
ヒールのおかげで今は私の方が背が高い。
足が痛いのを我慢して、常に高いヒールを履いていて良かったと思った。
彼に見下ろされるのは何となく我慢ならない。
「ディムロスが幸せになれるなら、私じゃなくてもいいわ。」
俯いてハロルドの表情を覗き込む。
こちらを見上げる彼の顔は怒りと羞恥で真っ赤に染まっていた。
「そう、貴方でもいいのよ。」
微笑んで、ハロルドの唇にそっと人差し指をあてた。
「私よりディムロスを幸せにできる自信があるなら、奪いにいらっしゃい。」
俯いた時に散った銀の髪を後ろに流すように払って、私は歩き出した。
小さい頃から自分が女である事がコンプレックスだった。
女だからと卑下される事に納得がいかなかった。
だから、わざと粗野に振舞った。
女らしい振る舞いなどして堪るものかと思った。
そうやって自分も男女差別の概念に囚われている事にも気付かずに。
そんな私を解放してくれたのがディムロスだった。
彼は性差になど囚われていなかった。
私の実力と人間性だけを評価してくれた。
それが、どれほど嬉しかった事か。
私を偏見から解き放ってくれた人。
コンプレックスを覆してくれた人。
自信というものを与えてくれた人。
とても、大切なひと。
彼が幸せになれるのならば、彼の隣にいるのが私でなくとも構わない。
私以上に彼を幸せに出来る人間がいるのならば、喜んで身を引こう。
「だけど、今はまだ無理ね。」
幼稚な嫉妬に身を焦がすハロルドを思い返す。
今の彼はただの子供だ。
とてもではないがディムロスは預けられない。
「もう暫くの間は、ディムロスは私のものだわ。」
そう、もう暫く。
いつか彼が成長する事を願いながら。
アトディム前提のアトハロ^▽^
拙宅のアトディムはこんなんです^^^
しかしハロルドが子供すぎる……
もう少しどうにかならないものか……