「おひとついかがですか?」
目を瞬かせて、差し出されたものを見遣る。
レースペーパーに載せられたそれらは、香ばしく、形もよく、一見すると、まるで……。
「何かねこれは。」
「クッキー以外の何かに見えますか?」
やはり、クッキーだったのか……。
しかし、イクティノスがそれらを持っている事に妙な違和感を覚える。
彼には実質的に双子の面倒を任せているだけに……その、何というか……母性のようなものを、ふと錯覚してしまう。
ああ、彼が着ているのは紛れもなく軍服だというのに。
「お嫌いでしたか?」
「いや、す、すまないね……頂こう。」
クッキーはサクサクと歯応えもよく、ほどよい甘さが美味しかった。
「あの子たちに作ったものの、余分ですが。」
「す、すまないね……。」
「いえ。」
一瞬、先程までの考えを言い当てられたのかと、馬鹿げた事を考えた。
というか、そうか、手作りか……。
「お口に合いましたか?」
「ああ、とても美味しいよ。ただ、贅沢を言うなら……。」
「なら?」
イクティノスが小首を傾げる。
「……もう少し甘いと、私は嬉しいかな。」
この戦時下において砂糖は貴重であるから、本当に贅沢な事なのだけれど。
そういうと、イクティノスは不思議そうに目を瞬かせてから、やがて面白そうに小さく笑った。
「甘いものがお好きなんですね。」
不敵とも言えるその笑みに母性を感じるなんて……やれやれ、私の感覚も随分と麻痺したものだ。
突発短文ー^▽^
何となくリトラーさんを喋らせたくて書いたもの