「ねえ、兄貴にばっか構い過ぎじゃない?」

本当に唐突に、私のデスクの端に腰掛けながらハロルドが言った。
発言の意図を暫く考え込んでしまう程の唐突なそれに、私は目を瞬かせた。

「それは、私がカーレルばかりを贔屓しているという事かな……?」

私としては分け隔てなく愛情を注いでいるつもりなのだが、少なくとも彼女の目にはそう映らなかったのだろう。
していたつもりだった、というのは相手の目にそう映っていない以上、言い訳以外の何物にもならない。

一体、何が彼女にそう思わせるにたらしめたのだろうか。
己の腑甲斐なさを素直に認め、恥じ入りながら、その原因を考えていると、彼女はふと口を開いた。

「よーするにね、スキンシップが足りないっつってんの。」

よいしょ。
そう言いながら、デスクの上を通り私の膝へと移動してきた彼女は、そこへちょこんと座った。

何だか得意気なその表情に思わず溜め息が零れる。

幾ら私が彼女にとっての扶養者であるとは言え、軽々しく男性の膝の上に乗りかかるだなんて事は言語道断だ。
もう23歳なのだから、もう少し女性らしく落ち着きをもった行動をして欲しい。

「……君はもう年頃の女性なのだから、スキンシップと言ってもこういう行動はだね。」

諭すようにそう言うと、彼女は膝の上でにこりと笑った。
そしてそのままの笑顔で90度に首を上向けると、私に向かってこう言った。

「可愛い娘が父親の膝に乗って、何が悪いのよ。」

これには呆れが先行してしまう。
これはそんな事を宣った彼女にではなく、父親と言われた事に頬を緩めている私に、だが。

こんな所をイクティノスにでも見られたら、間違いなく冷たい視線で溜め息を吐かれるに違いない。
そして仕事中に何をしているんだか……だとか、地上軍総司令としての威厳が……だとか、そう言った説教をされる事だろう。

それに、仕事が捗らないのも困ってしまう。
膝の上をハロルドが占領しているが為に、現在、碌に書類にも目を通せない有様だ。

「男だ女だなんて関係ないじゃない。兄貴ばっか構ってないで、偶には私にも構いなさいよ。」

そう言って、照れたようにそっぽを向く娘が可愛くて仕方がない。
ああもう、こんな書類など後でどうにでもなる。

そう思わせる位、可愛いと思えるのだから娘という存在は全く凄いものだ。
愛娘、という単語が存在する事にも頷ける。

「兄貴ばっか、ずるいわ。」

小さく呟いて顔を俯ける駄々っ子の耳は赤かかった。









リトハロコンビが好きです!^▽^
親子かわいいよ!^^^^^