「…………何の真似だ?」
ディムロスは当惑した顔で、至極真面目にそう言った。
「何って、見て分かんねえ?」
オレはさも当然のようにディムロスに耳かきを手渡して、ソファに掛けていたディムロスの膝の上に寝転がった。
ディムロスはやはり困ったような顔をしながらそれを受け取った。
「って事で、よろしく。」
膝の上でごろりと体勢を変えて、そのまま目を閉じる。
目を閉じていてもディムロスが困っているのが分かった。
それが、何となくおかしくて、思わずくすくす笑ってしまった。
「…………何がおかしい。」
「何ていうか、ディムロスが困ってんのがおかしい。」
憮然とした表情のディムロスに、笑いを含んだ声でそう答えると頭を軽く叩かれてしまった。
「からかっているのか?」
「いや、真面目に耳掃除して欲しいだけなんだけどな。」
そう言うと、ディムロスは渋々といった様子でオレの頭に左手を添えた。
「私は人にこういう事をするのは慣れていないからな、加減がわからんぞ。」
「へーきだって。痛かったら言うし。」
「……そうしてくれ。」
いやに真剣な顔つきで、ディムロスは耳かきをそっとオレの耳へと運んだ。
「いや、兄貴がいたら兄貴にやって貰おーかと思ったんだけどさあ。兄貴が丁度いなくって……。」
「喋るな!」
ディムロスは真剣そのものといった顔つきでそう言った。
「手元が危うくなるだろう!」
「……そこまで気にしなくても。」
「そうは言うが、鼓膜が破れたりしたらどうするんだ!」
大丈夫だとは思ったが、これ以上問答を続けても進まないような気がしたので、仕方なく黙る事にした。
「あー、はいはい。喋らないから、耳掃除頼むよ。」
「……うむ、分かった。」
ディムロスはやっぱり真面目くさった顔つきで、真剣に耳掃除に取り組んだ。
こんな事になるなら自分でやればよかった、とも思ったが、今更後にも引けずにそのままその場で目を閉じる。
殊更ゆっくり、そして丁寧にディムロスは耳掃除をしてくれた。
「よし、できた。」
ディムロスが満足気にそう言って、耳かきをそっと脇に避けた。
それを合図に、礼を言って体の向きを変えようとした。
瞬間。
「おー、さんきゅ…………っ―――!」
ぞくぞくっと背筋を薄ら寒いものが駆け上がる。
「っ、おま、ば……っ!」
耳を押さえて思わず立ち上がる。
そのままソファから滑り落ちそうになった。
「どうした、ハロルド?」
ディムロスはオレが何故こんなに慌てているのか分からないようで、ぱちぱちと目を瞬かせていた。
「っか、ヤロ……! ふー、ってすんなよ! 耳かきの先っぽについてるヤツ使え!」
「む、そうか。そうだな、すまん。」
仕上げに耳に息を吹きかけられて、思わず鳥肌になってしまった。
何故、ディムロスはそういう所に限って頭が回らないのだろう。
「今度からはこのふわふわを使う事にする。」
「あーもー、ふわふわとか言うな!」
「…………もこもこ?」
ディムロスは耳かきの先の綿毛をじっと見つめて言った。
「語感の問題じゃねーし!」
「……では、一体何が問題なんだ?」
いい年した男が、耳かきの先の綿毛をふわふわだのもこもこだの言っている事が問題だという認識は、どうやらディムロスにはないらしい。
「…………いや、何かもう、いいや。」
ふー、とか言ってる自分も、大体において大概であったなと思い直した。
自分から頼んでおいて何だが、思わず溜め息が零れた。
「さあ、反対側を向け。ハロルド。」
いっそ続きは断ろうかと思ったが、反対側の耳も掃除する気満々のディムロスにもう一つ小さく溜め息を零して、オレは再び膝の上に寝転がった。
アンケ第四弾のハロ(♂)ディムです!^▽^
しかしカオスである^q^
男二人で何やってんだかwww