「知っていましたか?」
窓の外を見上げる司令に声をかける。
「何だね?」
仕事の合間、ほんの少しの休憩にそう呟くと、司令はゆっくりとこちらを振り返った。
私は窓の外に視線を遣って呟いた。
「私達が視認している星の光というのは、実は何千年も前に発された光なのだそうですよ。」
「ほう、それはまた、一体どういう事だい?」
司令は興味深げな顔つきで、こちらに視線をくれた。
私はそれに少し気分をよくしながら、言葉の続きを口にした。
「光というのは秒速30万kmの速さで進むのですが、それでもこの地上にそれが届くまでに何千年も……いえ、距離によっては何万年もかかるというのです。」
「そんなにかい。」
司令は目を瞬かせて、その話に聞き入った。
「それほどまでに、この空は広いんですよ。」
司令はそのままじっと窓の外に目を遣って、静かに閉ざされた空を見つめた。
私はそんな司令を見つめて静かに呟いた。
「ですから、この空を独り占めなどという事は、到底出来る事ではないのです。」
司令が、驚いたような顔でこちらを振り向いた。
それに応えるように、私はにこりと微笑んで見せた。
「この空を独り占めにしたつもりの、あの思い上がった輩に、目に物見せてやりましょう。」
司令はそれを聞くと、ぷっと噴き出して言った。
「いや、希代の名演説だね……。君に人を纏める才能があったとは。」
「ご冗談でしょう。そんな台詞……司令に言われては厭味以外の何物でもありませんよ。」
「そうか、それはすまない。」
司令は未だにくすくすと笑いながら言った。
私はわざとらしく不貞腐れてみせた。
すると、司令はやはり笑みを含んだ表情で謝った。
司令が、ふともう一度窓の外を見上げる。
外殻に閉ざされた空、決して陽の当たる事のない大地。
あの星明りを、見せたい人がいるのだ。
「…………やろう。」
「ええ。」
そう言った司令に、私は静かに頷くのだった。
アンケ第五弾のリトイクでした!^▽^
集中力を上げさせて、仕事の効率を良くする為に話をしてるのかなあ、とか何か台無しな事を考えながら書いてました^^^^^