「雪が解けたら……。」
カーレルがぽつりと呟いた。
私はそれに耳を傾けながら、書類に万年筆をさらさらと走らせた。
「……春になったら、少将は何がしたいですか?」
仕事を手伝うでもなく、かといって邪魔をするわけでもなくそこに座っていたカーレルは、唐突にそんな質問を投げかけた。
私は思わず仕事の手を止めて、カーレルの方を見遣った。
「それは、一体どういう意図の問いかけですか?」
「それを少将がどう受け取るかという意味も含めての問いです。」
してやったりと言わんばかりの表情で、カーレルが微笑む。
私に仕事の手を止めさせて、自分の方を振り向かせたかったのだろう。
相変わらず、大人びているように見えて、やる事が子供だなと思いながら、私は少し頭を捻った。
「…………貴方は一体何がしたいですか?」
カーレルは驚いたようで、ぱちぱちと目を瞬かせた。
「少将、の……答えを聞いているんですが……。」
カーレルは少し戸惑ったようで、懸命に言葉を選びながらそう言った。
私は椅子に座ったまま、そんなカーレルを手招いてこちらへ呼び寄せた。
困惑した表情でこちらへ歩み寄ったカーレルを引き寄せて、そのまま膝の上に座らせた。
「あ、の……少将?」
カーレルは本当に困ってしまったようで、おろおろと私の膝の上で落ち着かなくしていた。
そんなカーレルの様子に思わずくすりと笑みを零しながら、私は呟いた。
「貴方のしたい事を……貴方と、ハロルドと、司令と、私とで一緒にしましょう。」
「え……。」
もう私よりも随分と大きくなってしまった背中を抱えて、そっとそう囁いた。
「春になったら、皆で、一緒に。」
カーレルは暫く黙っていたが、やがて静かに口を開いた。
「…………それが、イクティノスの望みですか?」
「ええ。」
呼称が変わっている事には気がついたけれど、黙っておく事にした。
「……そう、ですか。」
皆で、一緒に。
それをこの子が叶えてくれそうにない事にも薄々気がついていたのだけれど、やはり黙っておく事にした。
雪が解けて、滴がぽたぽたと垂れる音が遠くから聞こえてくるような気がした。
アンケ第六弾のカーイクです!^▽^
この後カーレルが「いつまでこの体勢でいるつもりですか?」とか言って、
「おや、構って欲しかったんじゃないんですか?」とか言われて真っ赤になってればいいんじゃないかな!^▽^