「ふんふーん。」
機嫌良さそうに鼻歌を歌いながら、机の引き出しから小さな小箱を取り出す彼女。
その掌には薄いオレンジに色づいた可愛らしいガラスの小瓶。
「あら、ハロルド。なぁに、それ?」
「さあね。当ててみたらぁ?」
わざとらしく惚けた彼女に小さく溜め息を吐いて、瓶の中身へ視線を向ける。
見れば中には半分ほど金平糖が詰められている。
「おやつに食べるの?」
「ぶっぶー!」
私がそう言うと、ハロルドは嬉しそうに笑ってそう言った。
私が解答を間違えたのが嬉しいのだろう。
彼女は私をからかって困らせたいのだ。
「おやつだったらこっちの袋から食べるわよ。」
そう言って、彼女は一番下の引き出しから大袋入りの金平糖を取り出した。
きらきら輝く赤や青や白。
彼女が好きそうな菓子である事は一目見れば分かる。
「これはね、いい事があったら一個ずつ瓶に入れてくの。そしたらいい事の分だけ金平糖が溜まっていくでしょ?」
「何でそんな事してるの?」
彼女の口にした解答はとても可愛らしい発想だが、一体何故そんな事をしているのだろう。
私が疑問に思って尋ねると、彼女は照れ臭そうに口を尖らせながら言った。
「……だって、そうしたら幸せが目に見える形になるじゃない。」
言いながら、金平糖を一つ摘んで瓶に放り込む。
金平糖が瓶の中で跳ねて、鈴の様な甲高い音を奏でる。
「ハロルド、貴女って……ロマンチストね。」
「うっさいわねー。」
見えない幸せを形にする方法を考え出した天才の頬に小さくキスを贈る。
ハロルドは恥ずかしそうに頬を掻いて「もう一個、金平糖入れとくわ。」と言った。
いい事に換算されてしまった小さなキスに、思わず微笑みが零れる。
「……そんで、瓶がいっぱいになったらアトワイトにあげるわよ。」
彼女はそんな私にそっぽを向いたままこう言った。
「楽しみにしてるわ。」
いつか彼女から贈られる幸せの味は一体どんなものだろう。
きっと甘いに違いないと思いながら、私はもう一度彼女にキスを贈った。
アンケ第15弾アトハロ(♀)^▽^
比較的可愛く書けたのではないかと自負しています^^^