最寄り駅を降りて、ぶらぶらと自宅に向かって足を進める。
吐き出す息は白く、真っ暗な空にぼんやりと靄を描いた。
「さみぃ……。」
黒のダウンジャケットに両手を突っ込んで、家路を急ぐ。
キンと冷えた夜の空気に、まるで耳が切り裂かれるようだ。
「早く帰って、さっさと暖かいものでも……。」
そう呟いた時、ふいにポケットに突っ込んでいた手のひらが震える。
携帯のバイブレーションだ。
「お?」
電話を取り出して画面をタップすると、すぐに相手と回線が繋がった。
「よお、どしたの?」
声をかけると、電話の向こうから遠慮がちな声が聞こえる。
「ああ、いや……今、大丈夫か?」
「じゃなかったら無視してる。」
「……お前らしいというか、なんというか。」
溜め息混じりの呆れた声が聞こえて、オレは僅かに眉をひそめる。
電話が取れる状況じゃなかったら、普通、無視するだろ。
「で、どうしたんだよ。」
「ん……ああ、いや……。」
どうしたんだろう、やけにそわそわしているというか……。
普段のこいつなら用件だけを告げて、あっさりと電話を切りそうなものだが。
「……なんかあった?」
オレがそう尋ねると、微かに息を飲む音が聞こえた。
暫くの沈黙。
聞くべきではなかったかと思った瞬間に、ぽつりと小さな声が聞こえる。
「声、が……。」
「声?」
聞こえてきた思いもよらない言葉に、目をパチパチと瞬かせる。
「声が聞きたくなっただけだ。」
……なんだ、そりゃ。
「……馬鹿じゃねーの。」
「うるさい。」
言葉とは裏腹に、口角が上がっていくのを感じる。
顔が見えない電話というツールにこれ程感謝した事もないだろう。
「時間、ある?」
「……なかったら電話してない。」
まあ、それもそうだ。
「今から会おうぜ。」
そう言うと、電話の向こうで小さく笑う声が聞こえた。
アンケ第16弾ハロディム^▽^
乙女チック全開なディムロスに(私が)死にそうになりました