「あら、ハロルド。これは?」

体調不良という名のただの睡眠不足でもってここへやってきたハロルドは、ベッドの上にかわいらしいピンクの包みを忘れたまま部屋を出て行こうとしている。

「あげるの。」

そう言って、ピンクの頭は部屋の扉を通り過ぎようとする。
その背中にポンと問い掛けの声を投げた。

「私に?」

するとハロルドは不機嫌そうな顔を全面に押し出して、肩越しにベッドに座る私の方をチラと振り返る。

「アトワイトに、あげるの。」

そして、むっつりと膨れた表情でそう呟いた。

一体、何だろうと首を傾げながら、ピンクの包装紙を静かに振る。
中でかさかさと軽い音がした。

「開けていいかしら?」
「……どーぞぉ?」

ハロルドは僅かに期待したような顔をしながら、それを隠そうと必死に不機嫌な顔を作っている。
本当に、何だというのだろう。

「……わあ、びっくりー。」
「…………何よ、その反応は。」

ハロルドは今度は本当に不機嫌な顔をして、こちらに歩み寄ってくる。

「いえ、でも、何ていうか……すっかり忘れてたわ。」
「…………アホワイト。」
「口が悪いわね、ハロルド。」

ベッドに座る私を小さな彼女が睨み下げた。
何となく、珍しい光景だ。

「そうね、貴女ってこういう行事好きよね。」

バレンタイン。
こんな行事をハロルドが見逃す筈がなかったのだ。

「忙しいとは、心を亡くすってよく言ったものよね。ホント。」
「凡人の考えだわ。」
「生憎と凡人なのよね、私。」

フン、と鼻を鳴らしたハロルドの頬を指先でちょんと突いてやる。
するとハロルドはますます不機嫌そうに、眼光を鋭くした。

「このハートって、本命チョコ?」
「さあー?」
「それとも友チョコ?」
「どうでしょう?」

仕方なく、ハロルドの機嫌を取ろうと中身についての話題を振る。
彼女はつれない答えを返すばかりで、なかなか機嫌を直してくれそうにない。

どうすれば、ハロルドの機嫌が直るか。
少し頭を悩ませて、それから私は彼女をぐいと引き寄せた。

「わぁっ!」

ベッドの上になだれ込んで来たハロルドを抱きとめて、二人してシーツの白にごろりと埋もれる。
一体何の真似だと言いたそうな顔をした彼女の前に先程貰ったハートの形のチョコレートを差し出す。

「じゃあ、これはハロルドのハート?」

ハロルドは一瞬きょとんとして目をパチパチと瞬かせた後、とても嬉しそうな笑顔になって「悪くない答えね。」と言った。
どうやら彼女の機嫌は直ったらしい。

私は彼女のハートを口に銜えて、それから彼女にキスをした。









アンケ第18弾アトハロ^▽^

バレンタインなので甘めで^^^^^