※女体化でアマツカさん宅の弟ハロルド(アルベルト)×拙宅の弟ハロルド(ロベルト)というお話です
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放課後の教室。
オレはいつものようにアルベルトと他愛のない話をしていた。

「で、さあ。暑いのにシャツの第一ボタンまで締めてんだよ。」

話しているのは共通の友人の話。
彼氏につけられたというキスマークを隠す為に、彼女は暑い日中にシャツのボタンをきっちりと留めていた。

『もう、ほんとしんじらんない……!』

恥ずかしそうに、嬉しそうに自らの彼氏を罵る友人に思わず砂を吐きそうになった事を覚えている。

「何の惚気だ、と思ったな。」
「でもさあ、ロベルトだって割といつもブレザーじゃん。」
「いつもじゃねーよ、まだ五月なのに半袖着てるお前の気が早いの。」

アルベルトはそうかなあ、と言いながらその長い髪の先端をくるくると指に絡ませた。
その仕種も、体型も、アルベルトは自分と違って女らしい。

「でもさあ、隠してるのかなって思っちゃうよね。」
「何をだよ?」
「むろん、キスマーク。」

その発言に、思わず呆気に取られる。
こいつに女らしさが感じられないのは、こういう恥じらいだとか慎みのなさの一点に尽きる。

「はぁ!? そ、そんなものついてるわけないだろ!!」
「ホントにぃ?」

疑るような視線でこちらを見遣る。
その視線が自らの胸元に向いている気がして、オレは思わず体を斜に背けた。
自意識過剰なのかもしれないが、妙に気恥ずかしい。

「……そ、それに、これはお前のそういうセクハラ対策でもあるんだから。」
「セクハラじゃないですぅー、アルのはスキンシップって言うんですぅー。」
「お前のはセクハラだ。」

アルベルトは妙にスキンシップ過剰のきらいがあった。
常からクラスメイトに抱きついたりだとか、頭を撫で回したりだとかを繰り返しているアルベルトだが、オレに対してはそれは更に如何なく発揮される。
取り敢えず、所構わず胸だの尻だのを撫で回すのは本当に止めて欲しい。

「ひどい。愛なのに……!」
「うるさい。」
「あー、ロベルト酷いー! アルはロベルトが好きなだけなのにー!」

そう、アルベルトはオレを好きだと言う。
…………オレもアルベルトは、嫌いではない。
そしてその感情をお互いが把握している。

だから、これは、俗に言う……付き合っている、という状態なのだが如何せん恥ずかしい表現だと思う。
また、アルベルトはそういった恥ずかしい事を平気で口にする。
全く、恋人だなどと言われた時には、恥ずかしさの余り倒れてしまいそうだった。

「そもそもロベルトが可愛いから悪いと、アルは思うんだよね。」
「はぁ、何言ってんのお前!? オレの何処が可愛いんだよ!!」

余りにも余りな発言にくらくらする。
オレが、可愛い?
薄ら寒いにも程がある。

「可愛いよー。背低いトコも、すぐムキになるトコも、色白いトコも、ぜーんぶ。」
「な、何だよそれ、馬鹿にしてるんじゃないか!」

背が低い事も、子供っぽい性格も、肌が青白い事も、全部コンプレックスだ。
あと、序でに言うと体型も女らしくない。

「何でー? アルは褒めたのにー。」
「褒めてないよ!」
「可愛いって言ってるんだよ?」

それらがどう可愛いに結びつくというんだ。
アルベルトの思考回路はつくづくおかしいと思う。
そもそも、小さい=可愛いではないし、喧しく騒ぎ立てるこの性格は鬱陶しいと自分でも思うし、青白い上に焼くと直ぐに赤くなる肌は全くもって面倒だ。

全てが女の子らしさからは縁遠い。
いっそ、アルベルトみたいなのの方が可愛いって言うんだ。

「えーそっかなー。ロベルトは可愛いから、アルはいっつもちゅーしたくなるんですけど。」

言いながら、アルベルトが額に小さくキスを落とした。
思わず後ずさる。

「ば、ばか……お前、何してんだよ……!」
「だから、ちゅーだよ。」

あからさまな発言に、更に後ずさる。
ぶつかった机が、ガタと嫌な音を立てた。

教室が一瞬シンと静まり返る。
まるで空気そのものが変わったみたいで、ドキリとした。

「ねえ、折角だからロベルトも惚気てみればいいんじゃないかな。」
「え、何それどういう……。」

アルベルトが笑う。
何だろう、途轍もなく嫌な予感がする。

「あれ? 理解してよ。アルがキスマークつけてあげるって言ってるんだよ。」
「い、いい。要らない……!」

嫌な予感と言うのは何故こうも往々にして当たるものなのだろう。
自分が不味い状況に追い込まれた事を悟る。

「えー、要らないなんてひどいー。アルしょんぼりー。」
「だって、必要ないだろ……!」

アルベルトがゆっくりとこちらへ近づく。
オレはその分だけ後ずさる。

「必要なくはないよ。だってアルがキスマークつけたいし。」

これは、ちょっとした駆け引き。
一先ず教室の扉まで逃げ切ればオレの勝ちだ。
しかし身長差による歩幅や、オレが後ろ向きに歩かねばならない事を考慮すると勝算は薄い。

「お、オレはキスマークなんてつけられたくない……!」
「えー、何で?」

ならばその分のハンディは言葉でカバーするしかない。
アルベルトの言葉に必死で答えを返しながら、オレは教室の扉へ向かってじりじりと足を進めた。

「な、何でっていうか……そんなの困る……。」

扉まで残り数歩。
ゆっくりと足を進めると、アルは少し困ったような顔で溜め息を吐いた。

「何で困る訳? ロベルトはアルの事嫌いなの?」
「え……。」

扉に手をかけた瞬間、アルベルトが呟いた。
思わず返答に躊躇した瞬間に一気に間合いを詰められる。

ガチャリ。

しまった。
扉の鍵を閉められた。

「残念、これで壁際だよ。」
「…………っ!」

顔の両サイドに手を突かれて、足の間に膝を割りいれられる。
人間の重心は臍の上にある、下半身を密着させられては逃げようがない。
まずい、完全にオレの負けだ。

「ねえ、何でロベルト逃げるの? やっぱりロベルトはアルの事好きじゃないの?」
「そ、そういう訳じゃないけど……。」

アルベルトの真っ直ぐな瞳に、思わず視線を逸らしてしまう。
そんなハッキリとしないオレの態度に、アルベルトが少なからずイラついているのが分かった。

「じゃあ、何でダメなの? ちゃんと言ってくれないと何がダメなのかアルは分かんないよ?」
「そ、れは……。」

この問答を繰り返すのも、一体何度目だろうか。
好き合っているのだからこういった行為がしたいというアルベルトに、いつもオレは首を振っている。
今までにこのようにアルベルトが強硬手段に出る事もない訳ではなかったが、最終的にいつもオレがごねて問答はなかった事になるのだった。
しかし、それが続きすぎては流石のアルベルトも我慢の限界らしい。
普段よりもイラついた少し低い声に、改めてそれを自覚した。

「ロベルト……。」

そのままの体勢で口付けられる。
深く吸い付くような口付けに、眩暈がした。

「っ、ん……あっ……お前、ここ、教室……!」

解放された口で、何とかそれだけを紡ぐとアルベルトは笑った。

「ロベルトってやらしいなあ。その”教室”で喘げるんだ。」
「ち、違う! 喘いでない……!」
「あれ、自覚ないんだ。へえ。」

アルベルトは優しげな手付きで、そっとオレの赤い髪を梳いた。
首筋を掠めるその手に、ビクリと身を震わせる。

「ああ、そっか。ロベルト壁際好きだもんね。」

そんなオレの様子に、アルベルトはにこりと笑って言った。
その台詞に、前回壁際に追い込まれた事を思い出す。

「腰抜けてたもんね。」
「ち、違う!」
「違わないよお。」

アルベルトはそう言いながら、右手をオレの腰に回した。

「あ、あんなのはオレじゃない……!」

前回の痴態を思い出して思わず赤面してしまった。
腰を抜かして、半分泣きそうになりながら、嫌だ嫌だと赤子のように駄々を捏ねて止めてもらったのだ。

「じゃあ、どんなのがロベルトなの?」

アルベルトが、腰に添えた手をそっと這わせる。
その感覚と、アルベルトの視線にオレはぐらぐらと重心が揺らぐ気分だった。

「ねえ、ロベルト。アルはどうすればいいの?」
「…………どう、すれば。」
「何がダメなの? 何が嫌なの?」
「…………何、が。」

思考が堂々巡りを繰り返す。
明確な指針を打ち出さない限りきっとアルベルトだって納得しない。
かといってそれを考える思考力は疾うに存在しなかった。

「オレ、アルとこういう事……したくない。」
「え……。」

アルベルトの表情が強張る。
その瞳に宿った昏い色に、アルベルトを傷つけてしまった事を悟った。

「だって、だって……おかしいじゃないか、オレもお前も女なんだぞ。普通こういう事しないだろ。」
「ロベルト……。」

アルベルトの顔が見られない。
怖い。
きっとアルベルトは怒っている。

「ダメなのか、普通に好きなだけじゃダメなのか、そういう行為がないとダメなものなのか?」

怯えたままに、自己の正当性を主張しようと捲くし立てる。
滑稽だと分かっていても止まらない。

「…………ねえ、普通って何?」

そんなアルベルトの言葉に、恐怖も忘れて思わず顔を上げた。

「逆に聞くけど、普通じゃないといけないの?」
「え、だっ……て……。」

言葉に詰まる。
そんな事、考えてもみなかった。

「だって、バレたらヘンな目で見られるんだぞ……?」
「アルは構わないけどね、ロベルトはそれが嫌なの?」

違う。
そうじゃない。
そうじゃなくて。

「それに、ずっと一緒に居られる訳でもないし……。」
「アルはずっと一緒に居るつもりなんですけど。」

アルベルトはあっさりと言い切った。

「そんなの、上手くいく訳ないじゃん。今はそんな事言えても、大人になったら事情は変わっていくんだぞ?」

そんなべったりの友情はこの社会において存在しない。
例え存在したとしても奇異の目で見られるだけだ。
下世話な視線で、恋情の類だと訝られるに決まっている。
そうすれば、疎外される。

「お前、後悔するかもしれないんだぞ。一時の気の迷いであんな事するんじゃなかったって思うかも知れないんだぞ。」

高校生という、ある意味で特殊な囲いの中においてはずっと一緒に居るというのは容易だ。
しかし、人はそんな刹那的には生きられない。
必ず周囲を取り巻く環境は変化し、自らの価値観は変動する。

「ロベルトは、後悔したくないの?」
「……っ、違うよ!!」

アルベルトの問い掛けに、思わず大声で怒鳴ってしまった。
もう少し自制できないものかと何処かで冷静な自分が呟いたが、今はこちらの感情の方が勝っていた。

それでも何とか働いた理性が、張ったテンションを緩めようと足掻く。
気持ちの昂ぶりを押さえ付けるかのように、アルベルトの肩を掴んで顔を埋めた。
アルベルトも、それには少し驚いたようだった。

「お前に……お前に、オレと一緒に居た事を後悔されたくないんだよ……!」

くぐもった自分の声が空気の振動を経て、自らの耳に伝わる。
この距離だ。
幾ら聞き取りにくいとはいえ、アルベルトにも聞こえているだろう。

「……ロベルトって、馬鹿だなあ。」

正直、喧嘩を売っているのかと思った。
人がこれだけ真面目に話をしているのに馬鹿とは何だと怒鳴りそうになった。
しかし、口を開く直前に、アルベルトの腕によって強く抱きしめられてしまった為、それは適わなかった。

「アルは絶対後悔なんてしないのに。」

心底嬉しそうに笑うアルベルトに、思わず体の力が抜けた。
アルベルトに支えられるままにずるずると体重を預けてしまう。

「っていうかさあ、今それで我慢なんかしてたらそれこそ後悔するって。」

簡単にそう言ってのけるアルベルトに、思わず呆れが先行してしまった。
アルベルトはオレの体を抱きかかえるようにしたまま笑って言った。

「それで今のこの好きって気持ちを押さえ付ける方がアルは嫌です。」

にこにこと笑うアルベルトの背中にそっと腕を回す。

「ぜってー、オレよりお前の方が馬鹿……。」
「うわ、ひどいロベルト。アルはロベルトが好きなだけなのに。」

アルベルトの胸元に頭を預けて、考える。

もしかしたら、いつか離れる日がくるかもしれない。
後悔する事もあるのかもしれない。
それらが絶対にない事だなんて言い切れない。

「……オレもアルの事、好きだよ。」

でもこの感情を押さえ付けてまでそんな平穏を得たいとは思わない。

「うわわわ、え、ちょ、ロベルト!?」
「……んだよ、文句あるのか。」
「な、ない……です……。」

自分はあれだけ好きだの何だの言う癖に、何で一々反応するんだ……。
ああ、もう本当に恥ずかしい奴。

「え、あれ、って事は、これはこのまま押し倒してもいいフラグ……?」
「フラグって何だ、フラグって……。」

アルベルトがそのまま両腕に力を込める。
オレは焦って、アルベルトの体から慌てて手を離した。

「いや、だって……いいんだよね?」
「だめ!」
「えー! 何で!!?」

アルベルトが不服そうに文句を言う。

「だって、ここ教室だぞ!?」
「いいじゃん。」
「よくない!」

全く、こいつは何を考えているんだか。
ぶうぶうと不平を垂れるアルベルトに溜め息を零して制する。

「じゃあ、キスマークだけ。」
「だ、誰かくるかもしれないんだぞ……!?」
「すぐ済むよ。」

腕の力を未だに緩めようとしないアルベルトに、渋々ながら頷いた。

「わーい。」

アルベルトが器用な手付きでネクタイを解いていく。
Yシャツのボタンを一つ、二つと外すその手にストップをかける。

「ちょ、ちょっと待てよ! 何処まで開けるつもりだ……!?」
「え、だって上のほうにつけたら、暑くてもシャツのボタン開けられなくなるよ?」
「…………。」

その言葉に、思わず黙り込んだ。

「まあ、ロベルトが惚気たいっていうなら、アルはそれでもいいけどねー。」
「い、いや、下のほうで……。」

ブラジャーを少し捲って、その内側にアルベルトが吸い付く。
オレは気恥ずかしくてどうにかなってしまいそうで、ただ視線を逸らしていた。

「さて、これでどうでしょう?」
「見せなくていいから。」

オレはアルベルトが口を離すなり、そそくさと衣服を整えた。
アルベルトは相変わらず嬉しそうに、にこにこしていた。

「アル、ロベルトすきー。」
「ああもう黙ってろよ、お前!」

それからは二人して、急いで校舎を出た。
いや、正確にはオレがアルベルトを急かしたのだが。

「アルは幸せです。」
「あー、だまれだまれ。」

先を歩くオレの後をアルベルトがのんびりと追ってくる。

「で、何処ならいいの?」
「何処って何が?」

唐突な問い掛けに振り向いて尋ねる。

「勿論、何処でならヤらせてくれ……。」
「お前っ、ほんっっと黙れよ!!!」

その言葉を遮るようにして叫ぶ。
有り得ない。
何でこんな道端でそんな事が言えるんだ、こいつは。

「で、何処ならOK?」
「…………。」
「ねー。」

ちょこまかと付きまとうアルベルトに、溜め息を零して小さく呟く。

「オレかお前の家、とか……なら……。」
「マジで? ひょっとしてこれはロベルトのおうちにお泊りフラグ?」
「だから、フラグって何だよ……。」

呆れながら言うものの、アルベルトは気にしていないようだった。

「…………オレは、アルの部屋に行きたい、かな。」

小さく呟く。

「…………!」

アルベルトが硬直した。

「マジで!? うん、掃除する! 部屋、綺麗にしておく!!」
「…………約束な。」
「うん、約束!」

調子に乗らせてしまったかな、とは思ったが何となく気分がいいので放っておくことにした。

「ロベルト顔あかーい!」
「ちがっ……これは、夕陽だ!! 夕陽の所為だ!!!」
「じゃあそういう事にしておこうか。」

さて、夕陽が沈んでしまったらどんな言い訳をするべきか。
オレは頭を悩ませた。










アマツカさん宅の弟ハロルド(アルベルト)女体化×拙宅の弟ハロルド(ロベルト)女体化という誰得ストーリー^^^^^
内輪にも程があるけどwwガチ百合楽しかったんだから仕方ないwwwwww

とりあえずここらで一旦纏め
ハロディムより恥ずかしいってこいつらどういうことだwwwwww
あと、アルベルトの口調が私には未だに掴めていないので、似非にも程があるのですがwww\(^o^)/