※性転換でアトワイト×シャルティエというお話です
 閲覧の際はご注意を!





「おっ、いたいた! おい、ハロルド!」

探していた赤い後姿を見つけて声をかける。
彼女は面倒くさそうな顔をして溜め息を一つ零しながら、こちらを振り返った。

「何だよ。」

関わり合いになりたくないという表情を満面に押し出して彼女は呟く。
その傍まで踏み潰した上履きで駆け寄って、要求を述べた。

「更衣室行ってシャルのセーラー取ってきてくれよ。」
「またかよ……。」

彼女は心底嫌そうな表情で眉間を顰める。
まあまあ、とその肩にポンと手を置くも、手酷く邪険に払われてしまった。

「それをやってシャルティエに文句を言われるのはオレだ。」

彼女は不服そうな表情でこちらを睨め上げてくる。

「大丈夫、俺もシャルに文句言われるから。」
「……それ、大丈夫って言わねーぞ。」

そう胸を張って答えたら、呆れかえった溜め息が聞こえた。

「ちょっとディムロスで遊ぶついでに、さっきシャルにちょっかいかけてた奴らをからかってやろうと思ってさ。」
「嘘付け、ついでが逆になってんぞ。」

本当はシャルティエに手出そうとしてた奴ら締め上げに行くのが目的の癖に、と言いながら彼女はシャルティエの所属するチア部の更衣室へ向かってゆっくりと歩き出した。
その後ろに続きながら軽い口調で呟く。

「えー、まっさかぁ。ディムロスで遊ぶのがメインだけど?」
「はいはい。」

ハロルドはオレの言葉を軽く受け流すと、彼女はチア部の更衣室へと入って行く。

「ほらよ。」

五分と経たずに出てきた彼女は、シャルティエのセーラー服一式をこちらへ放り投げながらそう言った。
もはやこのお願いも毎度の事であり、シャルティエのロッカーの位置も既に覚えてしまっているのだろう。

「サンキュ。」

簡単に礼を述べると彼女は三度目の溜め息を零しながら、小さく俺に呟いた。

「オレが口出すことじゃないかもしれないけどな、あんまりそんな事ばっかりやって嫌われてもしらねーぞ。」

彼女の台詞に思わず目を瞬かせる。
そして小さく噴き出して、それに答えた。

「まっさか、んな訳ないじゃん。」
「あー、そうかよ。お熱い事で。」

お前ら程じゃないよ、と彼女の恋人の事を指して言うと、彼女は真っ赤に怒って俺を殴るとそのまま何処かへ立ち去ってしまった。
何だろう、自分は何か悪い事を言ってしまっただろうか。

まあ、いいかとそのまま教室で着替えて、俺はシャルティエにちょっかいを出していた輩をからかいに行く事にした。





「アトワイト!」

バタバタとした足音に続き、教室の扉が勢い良くガラガラと開く音が響いた。
そこに立っていたのは予想通り、チア服の少女である。

いつものように制服がなくなっている事に気付いて、そのまま慌てて教室に駆けてきたのだろう。
チア服の下で高校生にしては豊か過ぎる胸が揺れていた。

「よお、シャル。」

椅子に逆さに凭れながら片手を上げると、近寄ってきたシャルティエに頭を叩かれた。

「また君は勝手に僕の服を……!」
「いってーな。別にいいだろーが、お前が着るより俺が着る方が似合うだろー?」
「ちょ……失礼だよ、君!」

何せ、俺の方が美人だしと呟くと、もう一度頭を叩かれた。
……事実なのに。

「全く君ときたら、毎度毎度……。」

ハア、と呆れたように溜め息を吐くシャルティエにふと思い立って問い掛ける。

「…………何、もしかして俺の事嫌いになった?」

ポツリと呟いてから、ハロルドの言葉に感化されてしまうなんて、らしくない事だなと思った。
しかし、口に出してしまったものはどうしようもない。

こうなってしまっては不可解そうに顔を顰めるシャルティエの返事が出るのを待つのみだ。

「はあ?」

しかし、シャルティエはそう言って、もう一度俺の頭を叩いた。
バチンという音が後頭部で響く。

これで三度目だ。
ちくしょう、暴力女。

「そんな馬鹿な事ある訳ないでしょ! ホラ、早く服脱いで!」

シャルティエはあっさりとそう言うと、俺の着ているセーラーのタイを引っ張った。
全く、ここまでくると呆れが先行してしまう。

「馬鹿じゃねーの。」
「もー、馬鹿は君でしょ!」

急かすシャルティエに促されるままに、制服を脱ぐと、今度は背中を叩かれた。
皮膚を叩くパチンという音と、ひりひりとする背中に思わずシャルティエを睨む。

「全く、女の子の前でそのまま着替えるなんて無神経にも程があるよ!」

人の背中を叩くお前は無神経じゃないのかとの文句を飲み込んで、そのまま元着ていた学ランへと着替えを済ませていく。
そんな俺の隣で、シャルティエは渡されたばかりのセーラーに袖を通していった。

「お前はどうなんだ、お前は。」

仮にも男の前で素の肌を晒して着替えていくのはどうなんだ。

「何言ってるの、今更でしょ。」

そう言って、シャルティエはセーラー服の横のジッパーを下げると襟を頭から被った。
何だか凄く我が侭な理論な気がするのは俺の気のせいなんだろうか……。

「ほら、帰るよアトワイト。」

さっさとタイを締めてしまうと、シャルティエはそう言ってこちらへ手のひらを差し出した。
全く、高校生にもなって手を繋ぎながら帰るなんて、こいつは恥ずかしいとは思わないのだろうか。

「……ったく、分かったよ。」

そう思いつつも結局はその手を取ってしまうのは、こいつの言う通りもう今更というやつなのだ。

「さっ、行こっか。」

シャルティエが笑う。
銀色の髪が逆光の夕陽に照らされて、何だか眩しかった。










シャルティエちゃんに悪い虫がつかないように、そこらの男子を締め上げにいくアトワイト君……^▽^
しかもわざわざセーラーで……

拙宅のアトワイト君は軽く病気ですね^^^^^